【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 玲さんは里奈さんを無視して、乃蒼を抱き上げた。

「乃蒼よりもママに頑張ってもらわないといけないな」

 玲さんが流し目でこちらを見た。恥ずかしい、どうしてこんなところでそんな話を……ところが乃蒼の真剣な目を見て驚いた。

「ままもがんばるよね?のあ、がんばる」

「頑張るって、乃蒼……ちょっと玲さん、そんな約束したらだめです」

「のあ……だめ?」

「……!」

 乃蒼の悲しそうな顔を見て驚いた。玲さんが乃蒼に言った。

「乃蒼、だめなことなんてない。何でもやってみないとわからない。頑張ってやってみよう」

 お母様は涙を浮かべている。私は胸が痛んだ。こうやって乃蒼は私の顔色を窺っていた……玲さんの言葉に猛反省した。

「うん、ぱぱ!のあ、がんばる!」

 乃蒼は嬉しそうに笑った。

 * * *

 婚姻届を出した後、初めて玲さんの住むマンションへ乃蒼と一緒に行った。

 乃蒼は広いリビングに大喜びだった。早速持ってきた三輪車を乗り回している。

「玲さん、このマンション、玲さんの職場から遠くないですか?」

「まあね。でも乃蒼を優先したかったんだ。ここなら今の保育園にぎりぎり通えると思うんだ。乃蒼が落ち着いたら、今後については決めよう」

「玲さん、ありがとう」

「琴乃。君の仕事も含めて、これからのことはゆっくり相談して決めていこう。僕は君さえ側にいてくれたらそれでいい」

 玲さんは私をぎゅっと抱きしめた。私も玲さんの身体に手を回した。

「私も玲さんがいれば、もう何も怖くないわ」

 ぱたぱたと乃蒼が走って来て、私達の足の間に入っていく。

「だめえ、ぱぱ。まま、のあの。ぱぱにあげない。ぱぱだめよ」

 乃蒼は私と玲さんの間に入って引き離そうとした。

< 160 / 192 >

この作品をシェア

pagetop