【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「大きな声を出さないで頂戴。映画監督の相馬さんと結婚するわ」

 相馬監督は確かこの間のカンヌ受賞の映画の監督だ。

「それは驚いた、おめでとう」
「おめでとうございます」

「だから近いうち記者会見をすることになると思うの。もしあなたとのことを聞かれたら、あれは嘘だと言っておくわ」

「いいか、日奈。余計なことをひとことでも言ったら、今度こそ絶交だからな」

「ちょっと、失礼ね。いい加減にして」

「玲さん、おちついて……本当にすみません」

 日奈さんは大きなため息をつくと、私に目を移した。そして下から舐めるように私を見つめた。なんだろう?

「あなた、確かに今日は綺麗ね。私の周りも女優かと思ってスカウトしようとしてたわ」

「そうだろう?聞いたか、琴乃」

 玲さんが私を抱き寄せた。

「いやだ、そんなデレデレの玲、見たくないわね。気持ち悪いったらない」

「うるさい」

 二人のこの特別な距離感。私はやはり少し嫉妬してしまう。でも彼の妻は私だ。彼女は他の人に嫁ぐ。これが運命なんだろうと思った。

「日奈さん。ご活躍とお幸せを祈ってます」

「ありがとう。じゃあね、おふたりさん。あなたたちもお幸せに」

 立ち去る日奈さんは後ろ姿も美しかった。

「はあ、本当に綺麗な人……」

「まだそんなことを言ってる。君だって綺麗だ。周りは皆君を見てるって日奈も言ってただろう」

「それはあなたといるからだわ。私ではなく玲さんを見てるのよ」

「全く、どうしてそうなんだか……ほら、手を入れて……挨拶へ行くぞ」

 彼は私の手を持って、彼は結婚したという挨拶に回りだした。

 最後にたどりついたのは、見たことのある初老の男性だった。

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