【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 乃蒼は玲さんを見あげて手招きした。玲さんは乃蒼の側にしゃがんだ。すると乃蒼は彼の耳元に口を寄せた。内緒話のつもりなんだろう。いつもより小さな声だが私にも聞こえた。

「ね、ぱぱ、こうのとりさんきた?」

 玲さんが私を見てニヤッと笑った。信じられない……本当だった。

 玲さんは笑いながら乃蒼の正面に膝をついて答えた。

「それがね、残念だけど昨日は来なかった。うちはまた今度かな?」

「こんどっていつ?あのね、さきちんのとこ、こうのとりさんきたの。いもうとできるかもしれないんだって。いいな……」

 私は悲しそうな乃蒼の頭を撫でた。

「咲ちゃんの方が乃蒼よりお姉ちゃんだから先にきたのかもしれないでしょう。乃蒼にはパパが来たばかりだし、いい子で少し待っていましょうね」

「うん、わかった。のあ、ぱぱいるから……いいよ」

「ママもパパが側にいてくれるだけで幸せ」

「しあわせ?」

「そう」

 彼に笑顔を向けると、玲さんは驚いたように目を見開いた。そして私の腕を急に引っ張った。気づくと彼に抱きしめられていた。

「僕も幸せだ、琴乃愛してる……」

「玲さん、ちょっと……乃蒼が……」

 乃蒼は呆れたように玲さんを見ていた。

「ぱぱ、ままのこといっつもぎゅってしてる……あまえんぼさんね」

「乃蒼!」

「ほいくえんのるみせんせいもいってるよ。あまえんぼさんはこまったさん。のあ、あれ食べてもいい?」

 乃蒼は目を輝かせて隣の部屋のテーブルにあるルームサービスを指さした。彼女の好きなオムレツが見える。食べ始めたところだったのだ。うなずくと、嬉しそうに走って行った。

 彼は乃蒼の発言に驚いたのか、私を抱きしめたまま固まっている。

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