【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 胸元に大きなシフォンのリボンが柔らかく結んであるのを、生地を広げて胸元に差し込んだ。

「これでどうですか?」

 彼は口元を抑えて横を向いていた。

「僕の目の前でやるなよ……君はそういうところが無防備なんだ」

「あ、ごめんなさい……」

「今日はこのあと何か用事がある?」

「いいえ、今のところは特にありません」

「じゃあ、とりあえずセレモニーが終わったら一緒にここを抜けないか?」

「え?」

「この国のパーティーは、主役がいなくなってもずうっと続くんだよ。酔いすぎて上に泊る人もいる。お祝いを言ったなら逃げるが勝ちだ」

 彼はそう言うと私にウインクする。見てはいけないものを見たような気がして息をのんだ。

 彼こそ自覚がなさすぎる。私でさえ、彼に目が行く。

 今だって、彼を遠巻きに見ている女性達の目が痛い。

 彼女達から逃げたいのは彼自身なんだろう。私は口実かもしれない。

 でもひとりで出るのは勇気がいる。彼と一緒に失礼しようと決めた。

「わかりました」

「よろしい。僕がしばらくの間ボディガードになってあげるから、何でも言うことを聞くようにね」

 私がこくんとうなずいたら、彼は嬉しそうにほほ笑んだ。目を奪われるほどのまぶしい笑顔だった。

 すると、ガーデンにアナウンスが入って皆が座りだした。

 彼に手を取られて私も席についた。周りが私達を見ながら何か話している。

 さっきの芝居で勘違いされたのかもしれない。彼は相変わらず手を繋いだままだ。

 主役ふたりの紹介と挨拶、それに参列者の代表が挨拶をはじめた。

 シャンパンを掲げて皆でお祝いして、この後は無礼講になるとアナウンスがあった。

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