【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
『嘘つくなよ、藤堂。彼女は今日ひとりだって言ってたし、見たことのない子だ。お前こそ、さっきまで彼女達をひとりじめしていたくせに……』

『そうだぞ、なんでも自分のものにしようなんて許せない』

 ここは彼の芝居を受け入れて続けた方がよさそうだと思った。

 私は藤堂さんの腕にそっと手をやり、笑顔を見せた。

『玲さん、やっと私の所へ戻ってきたのね。それなら許してあげるわ』

『ありがとう、()()

 彼に名前を呼ばれたのが初めてでびっくりした。

 彼はそのまま私の手を取り唇を近づけた。恥ずかしくて顔が熱くなった。

 でも彼の唇はつかなかった。ぎりぎりのところで止まり、彼は隣で茫然としている男性達をチロリと見た。

『なんなんだよ……それなら玲は他の女の子には絶対手を出すなよ』

『僕は君らと違って、近寄ってきた女性に手なんて一度も出したことないよ』

 彼らは両手をあげて何か早口で言うと、踵を返していなくなった。

「あの……助けて下さりありがとうございました」

「まったく君は相変わらず隙だらけだな。二度あることは三度あると言っただろう?今日の君は本当に綺麗なんだから、気を付けないとだめだ。その艶のある長い黒髪と君の大きな黒い目は人目をひくんだよ」

「でも藤堂さんにこの間言われたから、今日は髪を結んでわざわざ下ろしてきたんです」

 背が高い彼はかがんで私の耳元で囁いた。

「そのドレス……胸元が少し広いんじゃないか?」

 私はびっくりして下を向いて手で隠した。はずかしい、座っていたからもしかして見えたのかしら?

 実はショールがあったのだが、ついホテルに忘れてきてしまったのだ。

 私はこれでも前かがみにならないよう注意していたつもりだった。

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