【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 田沼さんが眼鏡のふちを持ち上げて高木さんをにらんだ。高木さんは驚いたようで、ごくりとつばを飲み込んだ。

「あ、いや……セクハラとかは現行犯逮捕じゃないとダメなんだよ。それに、俺みたいな下っ端が何をいったところで所詮……いやその、悪かったよ。じゃあな」

 そう言うと、そそくさと逃げて行った。

「ほんっと、サイテー。転職したくなるのはこっちだっていうの!」

「田沼さん……」

「まあ、本部長が突然いなくなったのはセクハラ案件のせいですよね?よかったですね。先輩は優しいから、告発して本部長と顔合わせるのは大変だろうと少し心配してたんです」

「確かにそうだよね。あの時は告発することしか頭になくて、その後のことまで頭が回ってなかった。庶務を離れられればいいぐらいにしか考えてなかった」

「まあ、神様がいたんじゃないですか?耐え続けた先輩に、ご褒美で海外旅行と今後の安定をくれたんですよ」

「なにそれ?」

「「あはは」」

 確かに目の前の仕事だけになったので、楽にはなった。

 昼休みに同期の佳純と社食で会った。

「琴乃ー、お帰り。楽しかった?」

「うん、楽しかったよ」

 お土産を渡すと喜んでくれた。A定食の生姜焼きを食べはじめた。

「あー、生姜焼きが美味しい。日本の料理はやっぱり美味しいね」

「イギリスの料理はあんまりおいしくないって言うよね?そうだったの?」

「そうだね、種類が少ないかな。でもハロッズでアフタヌーンティーしてきたけど、最高だったよ」

「そうなんだ、いいなー」

 写真を見ながら説明をした。すると、佳純がつぶやいた。

「ねえ、なんか琴乃変わったような気がする」

「え?」

 佳純は私の顔をじいっと見ながら言う。

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