【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 今回の来訪も半分は仕事、半分はプライベートだ。

 彼女がカンヌに出品する映画の主役をやったことで、イギリスでも公開予定の映画館からの取材とテレビ番組出演が決まった。

 事前に想定問答や英語の受け答えなどを手助けするよう文化庁から依頼があり、参事官は当然のように僕を相手に指名した。

 あくまでも仕事としてお受けしますと参事官には伝えた。

 これでも外交官、仕事としてやらなければならないことはもちろんやる。

 だがいくら彼女に言われようと、よりを戻すつもりはなかった。

 その直前に琴乃と出会った。運命だと思った。日奈にははっきり彼女が出来たと伝えるつもりだ。

 * * *

 妹の里香から突然電話が来た。

「お兄ちゃん、日奈さんとやり直すんでしょ?」

「何を言ってるんだ、そんなわけないだろう。まさか、日奈が里香に何か言って来たのか?」

「うん。すごい女優さんになったのに相変わらず優しくて、とっても嬉しかったー。親友の真子につい自慢しちゃった」

「馬鹿、余計なことを言うな」

「大丈夫、口止めしてあるから。心配しないで」

 昨日、会ったとたんに日奈は昔に戻ったかのように僕の腕を取り、身体を寄せてきた。

 彼女を張っている芸能記者がどこにいるかわからない。僕は彼女を叱った。

 日奈は帰り際、僕とよりを戻さないかとまた話してきた。

 彼女は文化親善大使になり、仕事で会うことが多くなった。

 話していると昔を思い出すのは確かだが、僕にその気はない。

 僕には今交際している彼女がいるのでと日奈にははっきり断った。

 琴乃が一般人だと知るや否や、自分以上に僕の為になる相手はいないと言った。

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