【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 今の上司である野原参事官が日奈をお気に入りで、応援すると言ってくれたと得意げに話した。

 ぞっとした。昔の彼女ならそんなことは言わなかった。彼女は僕の知っている日奈とはもう違っていた。

 日奈はうちの家族も知っている。彼女がデビューしたとき、一番騒いでいたのは妹の里香だった。

 あれから里香は、彼女が自分の姉になるかもしれないと周りに吹聴していた。

 別れたのも事務所のせいだと日奈から聞いていて、いずれ元のさやに戻ると思い込んでいる節があった。

「何を言ってるんだ。日奈とはずっと前に別れてる。よりを戻す気は全くない。あいつの言うことを信じるな」

「ねえ、お兄ちゃんに彼女が出来たって言うのも嘘でしょ。日奈さんにばれてたよ。お兄ちゃんがフリーでいるのも、日奈さんを待っていたからでしょ」

「……それも違う」

 日奈からその話を昨日聞かされて、とんでもない話だと思った。

 少なくとも両親はわかってくれていると思う。そんなこと信じているのは日奈と里香ぐらいだ。

 海外赴任は決まっていたし、彼女を作ったところで遠距離になる。

 最初の赴任は単身で勉強したいと思っていたから、結婚を考えていなかった。

 忙しいし、恋愛を遠ざけていただけだ。

「じゃあ、まさか、本当に彼女がいるとか?そっちでどうやって作るのよ。嘘ばっかり」

「嘘じゃない。彼女は最近できたんだ。もう日本に帰ったので、遠距離だけどね」

「誰なのそれ?」

「まあ、今度帰ったときにでも紹介するよ」

「なによ、信じられない。本当にいるなら名前くらい教えてよ。歳はいくつ?教えてくれないなら信じないからね」

 相変わらずうるさい。日奈を牽制するためにも教えた方がいいかもしれない。

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