【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「名前は蔵原琴乃さん。25歳で里香のひとつ上だな」

「へえ、本当に彼女出来たんだね。蔵原さんっていうんだ。私とほぼ歳が一緒なんて、お兄ちゃんそんなに私が好きだったんだね」

「何を言ってるんだか……彼女は里香と違って大人だ」

「じゃあ、蔵原さんがどんなに私より大人か確認するから、帰ってきたら絶対会わせてね。」

「機会があれば紹介するよ。じゃあな」

「もうお兄ちゃんたら相変わらず里香に冷たい。里香の近況は聞いてくれないの?」

「自分から話さないところをみると、まだ彼氏ができないんだろ?まあ、頑張れ」

「頑張ってるよ。でもね、彼、いくら誘っても一緒に映画へ行ってくれないの。どう思う?」

「里香。押してだめなら引いてみろっていうことわざ知ってるか?」

「え?」

「じゃあな。母さんたちにもよろしく」

 電話を切ってため息をついた。日奈と里香は猪突猛進。引くことを覚えれば少しは違う。

 僕は急な本庁の仕事の関係で、来週日本へ一日だけ戻る予定だった。

 彼女に会えるかどうかはまだわからない。仕事が忙しくて会えない可能性もあるから、期待させないために黙っていた。

 彼女の好きなあのデパートでお土産に彼女の好きそうな服を買った。ご家族へのお土産も用意してきていた。

 * * *

 その日、久しぶりに日本の本庁へ出社した。

「藤堂久しぶりだな。戻るなら言っておけよ。明日帰るんだったら自宅へは戻らないのか?奢るから飲みに行こうぜ」

 アジア局同期の篠原に声をかけられた。

「ああ、久しぶり。悪いが夜は予定がある。また今度な」

「何それ?里香ちゃんに何か頼まれた?それとも……もしかして女優とよりを戻した?」

 僕は驚いて篠原を見た。

「何を言ってる?」

< 55 / 192 >

この作品をシェア

pagetop