【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
第三章
ゴシップ
一度弦也とお母さんに会ったお正月から、彼がうちに来ることはなかった。
母のこともあり、彼が帰国している時は、私の方から出かけて行って会うようになった。
「琴乃。正月に話したとおり、恐らく今年度中に国内勤務へ戻ると思う」
「本当ですか?よかったですね、玲さん」
「ああ。やっと琴乃の側にいられるよ。長かった……」
彼は感極まったように私を引き寄せた。軽くキスを交わした。今日の夜の便で彼は戻る。今回もあまり時間がなかった。
「お母さんはその後どう?」
「母は落ち着いています。玲さんのことあまり話していないから……でも、玲さんが帰国したら、きちんと向き合うつもりです」
先日、彼にお母さんの病気のことを思い切って話した。
海外を怖がっていること、私が戻る前に発作を起こしたこと、全て話した。
私はお母さんに玲さんが近いうち国内へ戻ってくる予定だと話してあった。
だが、お母さんは首を横に振った。
『どうせ外交官なんだからまた海外に行くんでしょう。よりによって、琴乃はなぜ外交官と交際しているの?あなたは私を置いて海外に行く気なのね!』
その後お母さんは興奮して発作をおこしかけた。それからというもの、彼のことはお互い話題にしない。
彼は私をそっと抱き寄せた。
「そんな顔をするな……お母さんのことは一緒に乗り越えていこう」
私は顔をあげて彼を見た。優しい目が私を見ている。この目に甘えてここまできてしまった。
「玲さん……あなたと出会ってから私は本当に変わったってみんなに言われる。明るくなったって褒められるの。今の自分が好きだし、玲さんがいないときっと昔に戻ってしまうわ」
「そうなのか?」
「ええ」