細マッチョな藤川くん
びっくりしすぎて混乱中
びっくりした。
ホテルの一室で、私は椅子に腰掛け沈みゆく夕陽を見ながら考えた。
あの後、私はしゃがみこんで立てなくなってしまった。
「熱中症かな? 立ちくらみ? ちょっとパラソルの下で休んでなよ」
と、心配する仲間たちに「なんでもないよ」と笑いかけたが、「大事にしなきゃダメですよ!」という藤川くんの一言により、ひとりホテルに帰ってくることになった。
いや、ホテルまでは藤川くんが付き添ってくれた。終始藤川くんは私の顔色や足取りを心配しながらわずかに距離を取って歩いてくれた。部屋に付くと彼は「心配なので見てます」と言ってくれたが、それはさすがに断った。
「いいよ、いいよ。せっかく皆で遊びに来たのにもったいないよ。私は貧血気味だからよくこうなるの。慣れてるから大丈夫」
「でも……」
藤川くんのその心遣いはとても嬉しかった。けれど、藤川くんに今日を楽しんでもらいたいという気持ちが勝った。
「大丈夫! 気持ちはありがたいけどね。後輩の楽しみを奪っちゃうのは私も心苦しい!」
藤川くんに気を遣わせないように、つい先輩風を吹かせてしまった。すると彼はきゅっと悔しそうに唇を引き結んだ後、後ろ髪引かれるように振り返りつつ仲間たちの元へと戻っていった。
私は彼が買ってきてくれたペットボトルのスポーツドリンクを飲みながら、ぼんやりと考えた。
びっくりした。
藤川くんてば、優しい。
でもマッチョだった。
藤川くんが海を楽しめたなら嬉しい。
細マッチョって、シャツ着てるとわからないもんなんだ。
思考はとりとめもなく流れていく。
ペットボトルをもう一度傾けると、何も落ちてこなかった。中が空だと気付いた。
「もう一本買ってこようかな」
貧血気味だというのは本当だ。まさかわずかの精神的衝撃で立てなくなってしまうことがあろうとは思いもしなかったが。
「にしても、そこまでショック受けることか? 私って奴は」
ひとりごとをぶつぶつ言いながら、私は部屋を出た。
自販機を求めてロビーへと向かっていると、ちょうど皆が海から帰って来るところだった。
「吉岡さん、もう良くなったんですね!」
真っ先に藤川くんがこちらに駆けよってきてくれた。やっぱり優しい。
「うん、心配かけてごめんね。もうこのとおり、全然大丈夫!」
「でも、まだ顔色あんまりよくないですよ」
私の顔を覗き込みながら藤川くんが眉を寄せた。私は藤川くんからよく見えるように顔の向きを変えた。
「光の加減じゃない? ほら、もう大丈夫っ」
周りにいた皆も「ホントだ、顔色戻ってる」「元気そうで良かった-」などと納得してくれた。それを見て、藤川くんもやっとほっとしたように笑顔を見せた。
皆が部屋の方向に向かって行くのと反対に、私はロビーへと向かった。何故か藤川くんは私のあとに付いてきた。私は振り返った。
「藤川くんも何か買うの?」
藤川くんは「あ、そうです、そう」と取って付けたように頷いた。
ホテルの一室で、私は椅子に腰掛け沈みゆく夕陽を見ながら考えた。
あの後、私はしゃがみこんで立てなくなってしまった。
「熱中症かな? 立ちくらみ? ちょっとパラソルの下で休んでなよ」
と、心配する仲間たちに「なんでもないよ」と笑いかけたが、「大事にしなきゃダメですよ!」という藤川くんの一言により、ひとりホテルに帰ってくることになった。
いや、ホテルまでは藤川くんが付き添ってくれた。終始藤川くんは私の顔色や足取りを心配しながらわずかに距離を取って歩いてくれた。部屋に付くと彼は「心配なので見てます」と言ってくれたが、それはさすがに断った。
「いいよ、いいよ。せっかく皆で遊びに来たのにもったいないよ。私は貧血気味だからよくこうなるの。慣れてるから大丈夫」
「でも……」
藤川くんのその心遣いはとても嬉しかった。けれど、藤川くんに今日を楽しんでもらいたいという気持ちが勝った。
「大丈夫! 気持ちはありがたいけどね。後輩の楽しみを奪っちゃうのは私も心苦しい!」
藤川くんに気を遣わせないように、つい先輩風を吹かせてしまった。すると彼はきゅっと悔しそうに唇を引き結んだ後、後ろ髪引かれるように振り返りつつ仲間たちの元へと戻っていった。
私は彼が買ってきてくれたペットボトルのスポーツドリンクを飲みながら、ぼんやりと考えた。
びっくりした。
藤川くんてば、優しい。
でもマッチョだった。
藤川くんが海を楽しめたなら嬉しい。
細マッチョって、シャツ着てるとわからないもんなんだ。
思考はとりとめもなく流れていく。
ペットボトルをもう一度傾けると、何も落ちてこなかった。中が空だと気付いた。
「もう一本買ってこようかな」
貧血気味だというのは本当だ。まさかわずかの精神的衝撃で立てなくなってしまうことがあろうとは思いもしなかったが。
「にしても、そこまでショック受けることか? 私って奴は」
ひとりごとをぶつぶつ言いながら、私は部屋を出た。
自販機を求めてロビーへと向かっていると、ちょうど皆が海から帰って来るところだった。
「吉岡さん、もう良くなったんですね!」
真っ先に藤川くんがこちらに駆けよってきてくれた。やっぱり優しい。
「うん、心配かけてごめんね。もうこのとおり、全然大丈夫!」
「でも、まだ顔色あんまりよくないですよ」
私の顔を覗き込みながら藤川くんが眉を寄せた。私は藤川くんからよく見えるように顔の向きを変えた。
「光の加減じゃない? ほら、もう大丈夫っ」
周りにいた皆も「ホントだ、顔色戻ってる」「元気そうで良かった-」などと納得してくれた。それを見て、藤川くんもやっとほっとしたように笑顔を見せた。
皆が部屋の方向に向かって行くのと反対に、私はロビーへと向かった。何故か藤川くんは私のあとに付いてきた。私は振り返った。
「藤川くんも何か買うの?」
藤川くんは「あ、そうです、そう」と取って付けたように頷いた。