初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
英語が話せる人でも、祖母の故郷であるニューカッスル訛りの英語だと聞き取れないらしく……。関わりたくない時や興味のない相手に絡まれた際には、重宝していた。
こういう周囲の注目を集めている場面では、特に効果を発揮してくれるのだ。
案の定、衆目の的となっているのに気づいた兄は、脱兎のごとく消え去っていた。
「後は自分で何とかしろっ」
怯えたように縮こまっている妹に、そんな言葉を残して。
「何あれ? 口ほどにもないわね」
「おい!」
兄に対して未だ怒りのおさまらない様子で鼻息荒く憤慨する紫帆の腕を摑んで窘めようとしたところで、ようやく我に返ったようだ。
「ねえ、大丈夫?」
紫帆が女の子に向き合ったところで、慌てた女の子がペコリと頭を下げる。
「あっ、えっと、ありがとう……ございます……」
「私が勝手にやっただけなんだから、気にしないで。それより何よ? あの言い草っ!」
いなくなった兄に対して悪態をつく紫帆に、女の子が申し訳なさそうに口を開く。
「あ……兄が……すみません」
「もうよせって!」
「あっ、カッとなって……つい」