初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
見かねた零が紫帆を止めてもなお、女の子は俯いたまま小さな身体を竦ませていた。
心なしか、彼女の身体が微かに震えているように見えて、零は思わず問い返す。
「それより君、寒くない? 大丈夫?」
一瞬何を問われたか理解できなかったのかもしれない。しばしキョトンとしていた彼女がハッとしたように答えた。
「……あっ、はい。平気です――クシュンッ」
だが、言い切ると同時に女の子の可愛らしいくしゃみが響き渡り、零は思わず「プッ」と吹き出してしまう。
「平気じゃねーし」
すると紫帆にも笑いが伝染し、真っ赤になった彼女もつられたようにはにかむ笑顔を浮かべていた。
(笑うとえくぼができて、可愛いな。もっと笑えばいいのに……)
零は胸の内でこっそりそんなことを呟いていた。
三人でひとしきり笑い合った後、彼女は一度部屋に戻って着替えることになった。
その後は、紫帆の提案により、パーティーが終わるまで三人で過ごすこととなったのだが……
お互い気遣いはなしということで、素性を明かさずにいた。もしも縁があったら、また会えるからと――