初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 新学期を迎えたばかりの頃。

 本の貸し出しカードに繊細な字で『柚木遥奈』と記入された名前にふと目が留まり、呼び起こされたのは、パーティー会場で出逢った彼女――『ハルナ』の兄の顔だ。

 どこかで見た気がして、記憶を辿っていくうち……

 昨年の創立記念パーティーで挨拶を交わした、老舗ホテル「(すめらぎ)」の総支配人の子息だったのを思い出す。

 確か、異母兄と同じ学年だったはずだ。

 先代の総支配人が勇退してもなお威光を振りかざし、時代に逆行していると聞く。

 自分より弱者である妹を蔑視していたのも、その影響なのだろう。

 合点はいったが、苛立ちを覚えた零は、無意識に握りしめた拳をワナワナと震わせていた。

 とにもかくにも、彼女が『柚木遥奈』だと知ることとなった。

 驚くことに、零が読んだ本のほとんどに、彼女の名前が記入されていた。

 まさか、同じ学園に入学していたとは思いもしなかったけれど……。自分と同じ本を彼女も読んでいたのかと思うと、どうにも胸が騒いで仕方なかった。

 ――彼女に会いたい。

 そんな想いが頭を掠めたが、そうもいかない。

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