初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 生徒会長でもある零は、父譲りの容姿のせいで、良くも悪くも目立つ存在なのだから。

 放課後の図書室は、利用者も少なく穏やかに過ごせるが、それは見つからないように細心の注意を払っているからだ。

 いつからか『学園の貴公子』なんて呼ばれて、ところ構わず女生徒に囲まれて騒がれるようになった。

 そんな零が特定の女生徒と親しくしたら……。想像しただけでゾッとする。

 それ以前に、零には紫帆という許嫁がいる。

 紫帆は学園の生徒ではないが、零に許嫁がいることは周知されているのだから軽率なことはできない。

 そこまで考えを巡らせて、はたと気づく。

(――これじゃまるで……。いや、違う。そんなんじゃない)

 ――これはきっと、赤面症で思い悩んでいた彼女が、療養中の母と重なったからだ。

 慌てて打ち消したが、それからも彼女のことが頭から離れなかった。

 いつしか図書室をこっそり覗いては、本と向き合う彼女をそっと見守るようになっていた。

 ちょうどその頃だ。母の主治医で親友でもあった沢渡に、心療内科医が専門とする疾患について学ぶようになったのは。

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