初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
紫帆から受け取った時の心底嬉しそうな笑顔が忘れられなくて、あれ以来持ち歩くようになっていたのだ。
まさか、彼女に渡す機会があるとは思いもしなかったけれど。
もらっていいものかと、手を出すのを躊躇う彼女の手を零はそっと引き寄せると、ドロップを握らせた。正体を明かせない代わりに――
「これ食べて、頑張ってね。でも、無理しちゃ駄目だよ。熱心なのはいいけど、たまには息抜きも必要だからね」
零は穏やかな声で囁くと、心からの笑みを浮かべた。
彼女も何とか精一杯の笑顔と感謝の言葉を返してくれた。
「あ、ありがとう……ございます」
「どういたしまして。じゃあ、またね」
最後にそう告げたのは……。この想いが叶わなかったとしても、同じ夢を抱いていればいつか必ず――そう思いたかったのかもしれない。
でも、結局それは叶わなかった。
高校を卒業したら渡英することが決まっていたからだ。
だからこそ、忘れられなかったのかもしれない。
大切なことに気づかせてくれた、初恋の相手である彼女のことが――