初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
crazy about you


 二時間ほどして部屋に戻ってきた零から、パーティー会場で初めて出逢ってから、これまでのことを話してもらった。

 確かに、二人と出逢った記憶もあるし、一緒に過ごした記憶もある。

 活発で利発そうなスレンダーの美少女と、もっさりヘアと黒縁眼鏡のぶっきらぼうだけど優しい少年。

 二人の素性は知らないし、少年の顔は髪と眼鏡で半分ほど隠れていて見えなかった。

 だが、英語も堪能だったし、少年の身なりもよく、振る舞いも洗練されていたように思う。

 けれど、あまりに非現実すぎて、夢でも見ている心境だ。

 ――あの時の少年が、まさか、学園の貴公子だったなんて……

 図書室でドロップをくれた時――

『これ食べて、頑張ってね。でも、無理しちゃ駄目だよ。熱心なのはいいけど、たまには息抜きも必要だからね』

 ――『たまには』って言ってくれたのを思いだして、もしかして、以前から見てくれていたのかも、とは思ったけれど……

(――あっ、もしかして)

 入学式で初めて聞いた零の声に魅了されたのも、あの少年の声に重ねていたのかも……

(うん、きっとそう) 

 心が大きく揺さぶられ、胸がドキドキ騒いでどうしようもない。

 何とか抑えようと遥奈は胸元の服をぎゅっと握りしめた。

 そんな遥奈に、零はさらに言葉を重ねてゆく。

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