初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 零からもらった、あの、ドロップスだ。

 実は、零からもらったドロップスは恐れ多くて、食べられなくて……。自作の巾着袋に入れて、お守りとして、いつも肌身離さず持ち歩いていたのだ。

 医大受験や医師国家試験など、ここぞというとき握りしめていた。

 あくまでもそれは、当時のことだ。さすがに現在は持ち歩いてはいない。

 今日は、零に、ちゃんと向き合って、想いを伝えるつもりでいた。

 なので、お守りとして持参していたのだ。

 バッグにしまっていたのだが、部屋で零を待っている間、気持ちを鼓舞するために握りしめていたのがまずかった。

 恐る恐る零に包まれていない右手を確認すると、巾着袋だけが残されている。

(――キャー! 私のバカ、バカッ!)

 心で叫んだところで後の祭りである。

「遥奈? もしかして……これって、あの時の?」

 案の定、身を屈めドロップスを拾った零に問い掛けられた。

 もうこれ以上真っ赤になりようがないほどに、遥奈は茹だっている。

「もー、やだ。恥ずかしいぃ」

 今にも消え入りそうな声を震わせて、両手で顔を覆い隠し悶絶する。

「どうして? 俺、感動してるんだけど」

 零から予想外な言葉が届き、遥奈は指の隙間から零の顔色をそうっと窺った。

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