初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 涙で滲んだ視界には、困ったように眉尻を下げてこちらを窺う端整な相貌が映っている。

 早く応えて安心させてあげたいのに、そうさせているのが自分だと思うと胸がキュッとなる。

 遥奈はこれ以上泣かないように、ぐっと涙を堪えて声を絞り出す。

「零さんが、嬉しいことばっかり言うから、感動しちゃって」

 遥奈の言葉に安堵の息を吐いた後、何やら考え込む素振りを見せた零がポツリと呟いた。

「遥奈にはいつも笑っててほしいんだけど、嬉し涙なら、仕方ないか。でもな……」

 言い淀む零の心情が読めない。
 遥奈は意味がわからずキョトンとするしかない。

「実は、もう一つ伝えたいことがあるんだけど、また泣かせちゃうかもしれないから、先に謝っておくね。ごめん」

 だがそんなふうに前置きされたら、身構えてしまう。

 心臓までがドクドクと騒ぎ始める。

「……? な、なんですか?」

「俺、遥奈を諦めるためにクリニックに行ったって言ったけど。本当は、もう一つ目的があったんだ」

「も……目的、ですか?」

 『目的』と言われて、心臓が嫌な音を立て始める。

 ――もしかして、その目的を果たすために、打算で近づいたってこと?

 そんなはずはない。

 零がそんな酷い事するわけがない。

 零を信じたいと思うのに、不安が湧き起こってくる。

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