初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
胸騒ぎの正体が判明してスッキリするどころか遥奈の胸中は穏やかではなかった。
心臓はドクドクと嫌な音を忙しなく打ち鳴らす。
遥奈は思わずテーブルの下で膝上の手をギュッと握りしめる。
力を込めた手のひらには、遥奈の動揺を表すかのようにしっとりと汗が滲んでいる。
あの夜、あの男から突然のプロポーズを受けたが、遥奈は丁重にお断りした。
――そんなの当然だ。
『学園の貴公子』と呼ばれ憧れと羨望を独占していた彼の初恋相手が自分だなんて、何かの間違いとしか思えないのだから。
正直なところ、初恋相手に好意を抱かれて嬉しい想いもある。だからって、EDになった責任をとって結婚してくれと言われても、了承なんてできるわけがない。
助けてもらった件には、心から感謝している。だが、それとこれとは話は別だ。
そもそも、英国医大出身の零は医師免許を持っている。診察なんて、釈迦に説法ではないか。そう言ってやりたいところだが、診察を拒否するわけにもいかないし。
医師として相談にはのるが、それはあくまでも医者と患者としてだ。プライベートで関わる必要はないだろうし、義理もない。
もう二度とプライベートで会うこともないだろう――少なくとも遥奈はそのつもりだった。
けれど、あの神秘的なヘーゼルアイに憂いを湛えて、捨てられた仔犬が縋るような瞳で見つめながら……。