初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 それは、遥奈が医療に特化した宿泊プランの監修に現役医師として携わるに当たり取材を受けてほしい、というものだ。

 なんでも、公式発表した際のPRを兼ねているらしいが、経歴紹介が目的のため顔出しの必要のない簡単なものらしい。

 取材陣もメディアではなく、インペリアル・インターナショナルの広報部に所属する女性ライターと男性カメラマンによるものだという。

 とはいえ、取材には変わりない。

「零さんからも聞いてはいるんですけど、取材なんて初めてで……ちゃんとできるか不安で」

「取材と言っても顔出しもしなくていいようだし。社会勉強だと思って気楽に受ければいいよ」

 院長はそう言うが、経験がないだけにどうにも不安が拭えない。

 沢渡は、大学の客員教授を兼任し、学会でも一目置かれ、医学雑誌の表紙を飾るほどだ。取材なんて慣れっこなのだろう。

 ――やっぱり、沢渡先生の方が適任だったんじゃ……

 今さらながらに、遥奈はそんな思いに駆られていた。

 といっても、零から強制されたわけじゃない。

『あっ、だからといって無理強いするつもりはないからね。遥奈が気乗りしないなら、沢渡先生にお願いしても大丈夫だよ。先生のクリニックも連携してくれる予定だから』

 少しでも力になれるならと承諾したのだから。

 ――そんな弱気でどうするの! 自分で決めたことでしょ。しっかりしなきゃ!

 自身を鼓舞していると、零からかけてもらった言葉が浮かんでくる。

『同じ医師として尊敬してる』

(そうだ、零さんも言ってくれたじゃない。こんなことで弱気になってる場合じゃない!)

 ――これまで培ってきた経験を無駄にしないためにも、医師としての自分にもっと誇りを持たなきゃ。

 これまで、何よりも患者との対話に重点を置いて、患者の心に寄り添えるように、努めてきたつもりだ。

 赤面症に悩んできた自分だからこそ、わかることもある。

 ――まだまだ未熟かもしれないけれど、患者の心に寄り添いたい。その気持ちだけは誰にも負けない。

 零の言葉に後押しされた遥奈は、沢渡からの励ましにいつもの笑みを返すのだった。

「そうですね。社会勉強だと思ってしっかり務めてきます」

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