初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
思わず笑みを零した遥奈が隣に意識を向けると、蕩けるようなヘーゼルアイと視線が重なり、心臓が跳ねる。
「そうかもしれないね。楽しそうにしている遥奈の無邪気な笑顔が、可愛くて堪らなくて……。視線だけじゃなくて、心も奪われっぱなしだよ」
続けざまに、繋いだ手を引き寄せて距離を縮めた零が長身を屈めてくる。
そうして、さらりと甘い声音で耳許に囁かれて、真っ赤になった遥奈の鼓動はさらに速度を上げる。ドキドキして苦しいぐらいだ。
「や、ヤダ。そんなこと言われたら、どうしたらいいかわからなくなっちゃうじゃないですか」
思わず手にしていたガイドブックで顔を隠すと、ほっぺにチュッと口づけられた。
驚愕した遥菜はその場で飛び上がった。
館内にはデート中と思われるカップルや家族客で賑わっているが、幸いにもこちらを気にする様子はない。
だが、ところ構わずキスをされては、こっちの心臓が持たない。
零に抗議の視線を送ると、熱のこもった眼差しで見つめ返されて言葉を失う。
「遥奈。お願いだから、あんまり可愛い反応ばっかりして、俺のこと煽らないでよ」
「――っ!?」
ヘーゼルアイには、欲情の炎が妖しく揺らめいている。
(だ、ダメ! そんな目で見つめられたら、抗えなくなっちゃうから……!)
「れ、零さん。こんなところで立ち止まったら全部回りきれないので、早く行きましょう」
「照れてる遥奈も可愛いなぁ。うん、じゃあ、行こうか」
これ以上零に惑わされないよう、理性をフル稼働させた遥奈は意識を零から周囲へと移したのだった。