初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
秋の涼やかな風に溶けいるように、静かなアイリッシュハープの優しい音色が漂ってくる。
その音色に誘われるように視線を向けると、ロイヤルブルーのパンチカーペットが敷かれている。その先には、青や白の薔薇の花弁と行灯風のランタンとで円が描かれている。
なんとも素敵な演出だ。
——わざわざ自分のために用意してくれたのだろうか……
そう思うと、胸がいっぱいになる。
不意に零に呼ばれて隣の零を見遣ると、すっと右手を差し出してくる。
「遥奈、おいで」
「はい」
英国紳士然とした零の所作があまりに自然で、遥奈は迷いなく左手を彼の手にそっと重ねた。
互いの視線を絡めて微笑み合う。
なんだか、舞踏会でダンスにでも誘われている気分だ。
面映ゆさを覚えつつ、零にエスコートされるまま脚を進めてゆく。
するとカーペットに沿って飾られた青い花弁の小径が柔らかなライトの灯りと共に浮かび上がる。
あたかも、ブルーベルが咲き誇る、英国の森のよう。
王子様にエスコートされたお姫様のような心地になっていると、花弁で描かれたアーチの中央へと辿り着いていた。