初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
液晶画面に映し出されている『柚木遥斗』の文字を目にした途端、嫌な予感に苛まれる。
幸福に満ちていた遥奈の心が色をなくしていく。顔からも感情の色が抜け落ちていた。
スマホを手にしたまま画面を凝視することしかできない。
背後から零が心配そうに声をかけてくる。
「遥奈……」
ハッと我に返った遥奈は、取り繕った明るい声で答えた。
「兄からです。珍しい。何だろう?」
声が震えていたかもしれないが、気にかける余裕もない。震える手で通話ボタンをタップするのがやっとだ。
——お願い、悪い予感が外れていますように……
心の中で何度も祈り続けていた。
「もしもし、お兄ちゃん?」
『遥奈。今、話せるか?』
電話越しのせいか、久しぶりに聞いた兄の声は、低く、硬く感じた。
何かを押し殺したような重苦しい声音に、息が詰まりそうになる。両親の一大事ではないようだが、得体の知れない不安が拭いきれない。
「う、うん、大丈夫。どうしたの?」
表面上は平静を保っているが、鼓動が嫌な音を打ち鳴らす。
『来週にでも帰ってこれないか? 大事な話があるんだ』