初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
兄の言葉に心臓がドクンと跳ねる。
「……大丈夫だけど。急にどうしたの? 『大事な話』って何? 家のこと?」
『おまえが帰ってきたら話す。いいな?』
問い返しても、兄は答えてくれない。語気を強めるだけだ。
昔と変わらない高圧的な声に、遥奈は従うしかなかった。
「わ、わかった」
『じゃあ、帰る前に連絡入れろ。待ってるからな』
兄は一方的に用件だけ伝えると、用は済んだとばかりに通話を切ってしまった。
「……」
ツー、ツー、という無機質な音だけを残して——
兄との通話を終えた途端に、遥奈は力なく息を吐きベッドに項垂れる。
——嫌な予感しかしない。
天にも昇るような幸せな心地から、地獄に突き落とされたかのような気分だ。
一人絶望の淵を彷徨っていた遥奈の身体が不意に何かに包み込まれた。
そのあたたかな温もりに包まれて、強張っていた心と身体がゆるりと解れてゆく。
ようやくホッと一息つけた心地がする。
「遥奈、大丈夫? もしかして、ご家族に何かあったの?」
すべてを包み込むような、零の優しさが胸にじんわりと染み渡ってゆく。