初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
(そ、そうだ、零さんと一緒だったんだ。しっかりしなきゃ!)
遥奈は自身を叱咤し声を絞り出す。
「あっ、いえ、大したことじゃ。それより、ごめんなさい。話の途中だったのに……」
すると零は首を横に振り、遥奈の肩を抱く腕に力を込める。そうして、心に寄り添うにように優しく、小さな子どもに言い聞かせるようにして言葉を紡いだ。
「謝らなくていいよ。それより、遥奈のことが心配なんだ。大したことがないなら、言えるよね? 家族のことなら、俺にも聞く権利あるよね? ゆっくりでいいから、話してほしい。でないと、心配で何も手に付かないよ」
そこまで聞いて、遥奈はハッとした。
——これから、零の婚約者として、もっと強くなるって決めたばかりじゃない。こんなことでどうするの?
——もうあの頃の自分じゃない。だったら、俯いてないで、前を向かなきゃ。
覚悟を決めた遥奈は、静かに口を開いた。
「『大事な話がある』から来週帰ってこいって言われて、聞いても、何も……話してくれなくて……」
兄の声が脳裏をよぎり声が詰まりそうになる。それでもなんとか心を奮い立たせて言葉を続ける。