初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
「私はまだ専門医を目指す立場であって、顔出しできるほどの実績なんてありませんので。申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」
しかし、二人とも引く気配はまったくない。
「「そこを何とかお願いします」」
だがここで折れるわけにはいかない。
遥奈も怯むことなくキッパリと告げる。
「何度頭を下げられても、私の答えは変わりません」
頑なな遥奈の様子に業を煮やしたライターは、隣で静観する零へと助け船を出した。
「神楽木エリア統括支配人。柚木先生は、後輩なんですよね? だったら、神楽木エリア統括支配人と柚木先生の、ツーショットというのはどうでしょうか? 記念になりますし。美男美女のツーショットの見出しなんて、絶対、話題になると思うんです。いかがでしょう?」
零は二人を静かに一瞥すると、ふうと溜息を零してから静かに口を開いた。
「弊社、広報部としての君たちの気持ちは有り難いですが、今回のプロジェクトには、監修者の顔出しは必要ありませんよ。私がどうしてもと言って、無理を言って引き受けてもらっているのですから、これ以上、彼女に負担をかけるわけにはいきません」
仕事モードで凜とした雰囲気を纏っているからだろうか。零の声は穏やかなのに威厳があり、場の空気がスッと引き締まった気がした。
「……お言葉ですが」
それでも引こうとしないライターに、零は静かに低い声音を響かせる。
「私にとって彼女は、生涯のパートナーとなる大切な女性だ。公での婚約発表もまだの段階で、顔出しされては困る」
零の驚きの発言に、静かな空間がどよめいた。