初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
一瞬息を呑んだライターとカメラマンは瞠目したまま顔を見合わせている。
レフ板を取り落としそうになった女性は、茫然としている。
周囲のスタッフも気にかけてはいるようだが、そこはプロ、持ち場の仕事を遂行している。
婚約者として公表する時期については零に一任していたので、そこまでの驚きはない。
もちろん、零の婚約者としての覚悟もとっくにできている。
けれど、なんだか面映ゆい。
そんな最中、零の優しい声音が耳許に届いた。
「遥奈、取材続けても大丈夫?」
「はい」
零に笑顔を返すと、零もふっと柔和な笑み返してくれる。
束の間、二人の視線が甘やかに交差し、静かな時間が流れた。
その様子を目撃した周囲のスタッフらが、ぽっと頬を赤らめていたことなど、二人は知らない。
「それでは、取材を再開してください」
「あっ、はい。かしこまりました。それでは、取材の方進めさせていただきますね」
そこに、零の凜とした声が放たれ、何事もなかったかのように取材が再開されたのだった。