初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
その傍らには、零がティーポットから注いでくれたロイヤルミルクティーで満たされたアンティークカップが鎮座している。
――何とも贅沢なひとときだ。
そんな中、出入り口からコンコンコン……と控えめなノック音が響き渡った。
「どうぞ」
零が入室を促すと、「失礼いたします」そう言って友成が姿を現した。
「例の件ですが——」
友成の言葉を耳にした途端、零の相貌から甘さがすっと消えた。ヘーゼルアイにも鋭い光が宿っている。
「構わない、続けて」
「はい。……やはり、オーシャンズグループが関わっているようです。いかがなさいますか?」
「引き続き探るよう指示を頼む。何か動きがあればすぐに報告するよう、伝えてくれ」
零と友成の緊迫した空気に、遥奈は背中に冷たいものが流れるのを感じていた。
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
友成が退室するなり、零が真剣な面持ちで真っ直ぐに見つめてくる。
「遥奈、お兄さんの目的がわかったよ。予定通り俺に協力してくれるね?」
そうして零から発せられた、予感したとおりの言葉に遥奈は息を詰めた。けれど――
「はい、もちろんです」
遥奈の心は変わらない。
例えなにがあろうとも、零と力を合わせて、共に歩む未来を切り開いてみせる——
そのためにも、兄と向き合わなくてはならないのだから。