初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
好機逸すべからず
実家にある応接室の扉を前に、遥奈はふうと溜息を漏らした。
「遥奈、大丈夫?」
「あっ、はい。大丈夫です」
零の頼もしい声に後押しされて、遥奈はいよいよ兄の待つ応接室へと脚を踏み入れた。
——兄に会うのはいつぶりだっただろう……
祖父と同じ古い価値観を持つ兄と顔を合わせるのが嫌で、盆と正月に顔を出すだけ。
両親も気を遣ってくれていたので、帰省しても兄と鉢合わせすることもなかった。
兄と会うのは祖父の三回忌以来——二年ぶりだ。
思い返せば、兄と顔を合わせるたびに、何を言われるかとビクビクしてばかりいた。
兄に『大事な話がある』と呼び出され、零と共に実家に脚を向けたものの、正直怖くてどうしようもなかった。
そんな兄が今、遥奈と共に現れた零を中央の応接セットから見据えている。
遥奈は震えそうになる脚に力を入れて、兄の元まで歩みを進めた。すると零を値踏みするように見遣った兄が冷たい声を放った。
「外資系ホテルと繋がってるって、本当だったんだな?」
応接室の空気がピンと張り詰め、怯みそうになる。それをぐっと堪えながら兄を強い視線で射抜いた。
そこに、兄からいよいよ核心が放たれた。