初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
「けど残念だったな。おまえには皇のために、オーシャンズグループの後継者と結婚してもらう。だからその男とは別れろ」
さも、当然だとでも言うように。
あまりに傲慢な物言いに唖然としたが、怖さは感じない。それよりも、別れろ——その言葉に胸が抉られるかのような痛みに襲われた。遥奈は胸もとの服をギュッと握りしめ、キッパリと言い放つ。
「嫌! もうお兄ちゃんの言うことなんか聞かない。例え何があっても零さんとは絶対に別れないから!」
兄に楯突くのはこれが初めてだ。
遥奈の毅然とした態度に兄は動揺を見せながらも、言い募る。
「……はぁ!? お、おまえ、自分が何言ってるかわかってんのか? これまで誰のおかげで好き勝手できたと思ってるんだ? 俺が犠牲になって皇の後継者になったからだろ?」
「……それは、感謝しているし、尊敬もしてる」
その言葉に嘘はない。けれど、それとこれとは話が別だ。
いくら訴えたところで、価値観の違う兄には理解できないかもしれないが……
「だったら——」
予想どおり、兄は遥奈を何とか説得しようと口を開きかけた。その刹那、応接室のドアがガシャリと開かれ、父が割って入ってくる。