初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
――ひゃぁッ‼
驚いた遥奈は動揺のあまりビクッと大きく飛び上がり、素っ頓狂な声を漏らすところだった。危ない危ない。
それは何とか回避できたが、メディカルチェアがガチャンと派手な音を立てた。同時に看護師の声が響き渡る。
「遥奈先生、よろしいですか?」
ぎこちない動きで振り返りながら視線を向けると、ドアの隙間からひょっこりと顔を出す看護師と視線がバチッと重なる。
看護師トリオの一人である大栗が先ほどの音に反応して不思議そうに様子をうかがってくる。
「……? 大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。どうぞ、お入りいただいて」
遥奈は何もなかった風を装って華麗に躱し、心を掻き乱す張本人である神楽木零を迎え入れたのだった。
どうなることかと頭を抱えたが、遥奈が案じたような事態にはならず、思いの外スムーズ? に零の診察は進んでいた。
「――そうですか。それはお辛いですね」
「悪いことばかりではないですよ。こうして遥奈先生の笑顔に癒してもらえてるんですから」
不意打ちのように、悪戯っぽい笑みと熱のこもった眼差しを向けられて、油断していた遥奈は一瞬言葉を詰まらせる。
「……っ、じょ……冗談も言えるようで、何よりです」
何とか立て直そうと遥奈が躱すも、零はすかさず甘い声音で切り込んでくる。
「心外だな。本心を言ったまでですよ」