初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 そこからは早かった。

 すぐに父に連絡し、その日のうちに実家の父の元に向かうこととなったのだ。

 もちろん、兄には気づかれないように。兄はホテルに居室を設けているので好都合だった。

 両親は、遥奈が過去の恋で傷ついているのに気づいていたようで、結婚は諦めていたらしく……。零を見るなり、涙を浮かべて歓迎してくれた。

『そうか、そうか、遥奈もようやく』
『まぁ、素敵な方じゃない。安心したわ』

 さすがに、零の肩書きには度肝を抜かれていたようだけれど。

『遥奈が選んだ人ですもの、大賛成よ。ねえ、あなた?』
『ああ。もちろん、私も大賛成だよ』

 零は、難なく結婚の許しをもらい、パートナーシップ契約の話まであれよあれよという間にまとめたのである。

 それから正式な手続きを経て一週間のうちにパートナーシップ契約を締結させて、オーシャンズグループとの業務提携は白紙となった。

 だが、父が断っていた政略結婚を独断で進めようとしていた兄は、父の怒りを買って、降格となったのだ。

父に見限られた兄は、失意のどん底にいるに違いない。

 兄の様子に、大きな衝撃を受けた遥奈は動揺の余り狼狽えた声を出す。

「お兄ちゃん……」

 その声を拾った兄が、ふっと皮肉めいた笑みを漏らしてから、吐き捨てるように呟いた。

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