初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


「……っ」

 兄が息を呑んだ。

「私は、遥奈さんの実家だからとか、身内だからとか、そんな理由で皇を憂慮するつもりはありません。皇に〝価値〟があるからこそ、パートナーシップ契約を打診したんです」

 兄の目が大きく見開かれる。

「これから皇を立て直すために、我が社が参入する医療特化型のホテルプランとブライダルを組み合わせた新事業を展開します。プレマリッジケアやカップルカウンセリングなどは遥奈さんに担ってもらいます。あなたには、新しく生まれ変わったブライダル部門を取り仕切ってもらいたいんです」

 兄が瞠目したまま固まった。けれど、すぐに遥奈に視線を投げて、真偽を確かめるように視線を逡巡させる。

 遥奈は兄を見つめてしっかりと頷いてみせた。

 それでも兄の視線は、遥奈と零の間を往き来するばかりで定まらない。

 零は構うことなく兄に一歩近づき、正面から兄と視線を合わせた。

 そうして静かにけれど揺るぎのない声音で畳みかける。

「——それが総支配人であるお父さまの願いであり、遥奈さんの願いです。もちろん、引き受けてくれますよね?」

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