初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
けれど、兄は視線を伏せて、握り込んだ拳と声を震わせる。
「……でも、俺は……皇を守れなかったばかりか、遥奈まで——」
だが皇がこれまで持ちこたえてこられたのは、間違いなく兄の力が大きい。父からもそう聞いている。
――だからこそ、兄には立ち直ってほしい。
――これからは、家族で一丸となって、皇を盛り立てていくためにも。
そして、願わくば、ピアニストを夢見ていた頃の兄に戻ってほしい——
「ブライダル部門を強化したのはあなたでしょう? こんな好機逃す手はないと思いますよ。共に皇を立てお直しましょう。総支配人からも、『途中で放棄されては困る。最後まで責務を全うしてもらわなければ、スタッフに示しがつかない。責任を感じているなら、ブライダル部門の責任者として、皇を立て直してみろ』と、伝言を言付かっています。否やがあるなら、総支配人に直接伝えてください」
零が父からの伝言を伝えても、兄は二の足を踏む。
「……いや、でも……」
遥奈は思わず兄に駆け寄っていた。
——なんとか兄に考えを改めてほしい。少しでも兄の心に寄り添いたい。
そんな想いに突き動かされていたのだ。
「今までお兄ちゃんに任せきりで、ごめんなさい。お兄ちゃんがどんなに大変だったかも知らずに、ごめんなさい。何もできなかった分、少しでも力になりたいの。でも、私だけじゃどうにもならないの。だから、お兄ちゃん、力を貸して、お願い」