初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
この男――神楽木零から初恋相手が自分だと告げられても、身に覚えがまったくない。
なぜなら、遥奈が一方的に好意を抱いていただけで、彼と話したのは一度きり。それも言葉を一言二言交わした程度だ。
初恋相手を前におどおどしていた遥奈には、零から好意を抱かれるような要素などなかったはずだ。
当時、赤面症に悩んでいた遥奈は、引っ込み思案で見た目も地味だったのだから。
彼は、当時から、誰もが振り返るほどの華やかな美貌の持ち主だった。
華やかなのは見かけだけではない。
世界最大のホテルチェーンで知られる『インペリアル・インターナショナル』の御曹司という肩書きの持ち主でもある。
遥奈とは住む世界が違いすぎる。もはや異次元である。
そんな相手から、初恋相手だと言われても信じられるわけがない。
ひょっとして、からかわれているのだろうか? とも思ったが、そんな雰囲気ではない。真剣そのものだ。
――もしかして、これは、夢なのでは……
眼前で繰り広げられている光景があまりに非現実すぎて、頭がついていかない。
なので、夢だと思い込もうとしていた、その時、目の前の男に動きがあった。
遥奈の手を恭しく持ち上げぎゅっと両手で包み込んだ男が甘い声音で囁いてくる。
「責任をとって、俺と結婚してください」
(――はっ!? け、結婚って……)
これではまるでプロポーズではないか。やっぱりこれは夢に違いない。そう結論づけたいところだが……
男の手のぬくもりと熱い眼差しとが、遥奈に夢ではなく現実なのだと訴えかけてくる。
――どうやら、夢ではないらしい。
そう理解できたものの、呆気にとられた遥奈は放心状態に陥っていた。