初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
友人として


 衝撃的なカミングアウトから数日が経過し、遥奈の日常は落ち着きを取り戻しつつあった。

 季節は五月中旬。まだ初夏だというのに、真夏を思わせるような容赦ない暑さが続いている。

 満員電車に揺られ職場の最寄り駅に降り立った遥奈は、足早に改札を抜けると地上までの階段を上りきる。

 ふと爽やかな青空を見上げた遥奈は、朝だとは思えない日差しの強さに思わず目を細めた。

(……うっ、まぶしい。今日も暑くなりそう)

 車道から吹いてくる生あたたかな風が猫っ毛の茶色いミディアムヘアをさらりと揺らす。

 遥奈は頬にかかった髪を耳にかけてから、職場に向けて脚を進めた。

 程なくして、淡いミントグリーンの外観が目を引くクリニックへと到着した。

 職場である、ここ『こころメンタルクリニック』は、ファッションの街として知られる青山にある。

 高級住宅地としても広く知られているが、公園や外苑もあり、自然を間近で感じられる。緑が溢れ落ち着いた雰囲気がメンタルクリニックにピッタリだと考えた院長が二十年前に開業したそうだ。

 確かにピッタリだと思う。

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