初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
光り輝く未来へ


 初めて兄と向き合ったあの日から時間は流れ、季節は麗らかな春を迎えていた。

 新しく生まれ変わった老舗ホテル皇の控え室には、柔らかな陽光が差し込んでいる。

 まるで、皇の門出を祝福するかのように。

 遥奈は鏡の前で、少しでも緊張を解こうと深呼吸を繰り返す。

 以前の自分は、傷つくのを怖れて前に進めずにいた。

 恋愛も、兄のことも、目を背けて、逃げてばかりいた。

 けれど、もうあの頃の自分はいない。

 この半年の間、ブライダル部門を強化するため、ファイナンシャルプランナーをはじめとする専門家と打ち合わせを重ねてきた。

 学ぶことは膨大で苦戦したけれど、皇を家族一丸になって立て直す——新たな夢に向けて全力を注ぎ込む兄の姿に何度も励まされた。

 もちろん、婚約者である零にも——

 慣れないホテル監修とプレマリッジケアという新たな試みへの不安から、弱音を零したときには……

『少しは成長できたと思ってたんですけど、まだまだですね……』

『そうやって変わろうとしている時点で、成長していると思うけどな。遥菜は自分の夢を自分の力で叶えたんだよ。あの頃の綺麗な心のままで、あの頃よりもさらに磨きがかかって、素敵な女性になってるよ。だからこそ、再会した俺は改めて恋に落ちたんだ。今だってそうだよ。遥奈に会うたびに——好きになってる』

『……零さん』

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