初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
遥奈が零の姿に見惚れていると、チャペルの奥から懐かしいピアノの旋律が流れてくる。
優しくて、切なくて、それでいて力強い音色。
兄の演奏だ。
幼い頃、よく兄にせがんで弾いてもらった記憶がある。
あの頃は優しくて頼りがいのある兄だった。
それがピアニストになりたいという夢を諦めた頃から変わってしまった。
両親も、そして遥奈も、夢を諦め家業を継いだ兄に、負い目を感じていたせいで、見て見ぬフリをしてきた。
古い概念を持つ祖父の威光もあって、そうすることで均衡を保っていたのだ。
けれど、半年前、兄と初めて向き合い、皇を立て直すという新たな夢を叶えるために家族で共に力を合わせると誓い合った。
あの日から、兄は少しずつ変わって、今では互いに励まし合うまでになれている。
こんな日がくるなんて思いもしなかった。
こうして家族と共に夢への第一歩を踏み出せたのも、零のおかげだ。
零の夢も、あと一歩で叶えられるところまできている。
それも含めて、これから零と共に歩んでゆく未来も共に力を合わせて切り開いてゆきたい。命が尽きるその瞬間まで——