初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
「嬉し涙なら、俺がすぐに拭うから、いくら泣いてもいいよ。けど、俺のいないところで泣いちゃダメだよ。俺以外の男の前で泣くなんてもっての外だからね。いい?」
「ふふっ、そこは、譲らないんですね」
「そんなの当然だよ。遥奈の笑顔も、泣き顔も、何もかも全部——俺だけのものだからね」
「ふふっ」
「何がおかしいの?」
普段はとっても冷静だし、見かけも英国紳士然としているのに……。遥奈のこととなると、こんなふうに時折駄々っ子みたいになる零。
(駄々っ子みたいな零さん、メチャメチャ可愛くて、堪らないんですけど……!)
——零こそ、どれだけ夢中にさせれば気が済むの?
夫——零への愛おしさは増すばかりだ。
零の言うように、これから毎日、零を想い続けていくに違いない——
「零さんも、私だけのものですからね」
「そんなの当然だよ、夫婦なんだからね。だから、もう、『さん』は要らないよ。呼び捨てで呼んでほしい。こんなふうに、自分から呼んでほしいと思ったのも、お願いしたのも、遥奈が初めてだから」
紫帆に嫉妬していた遥奈への気遣いも忘れない零の心遣いに、胸がほわんとあたたかくなる。
おかげで、零を呼び捨てにしていた紫帆への対抗心を燻らせずに済んだ。
遥奈は素直な心持ちで、何の憂いもなく愛する夫の名を紡いだ。
「零」
口にした瞬間、破顔した零にギュギュッと抱きしめられた。