初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


「そうですか、ありがとうございます。遥奈先生のおかげで、仕事に集中できそうで、ホッとしました。お礼にと言っては何ですが、週末に食事でもどうですか? とても雰囲気のいい店があるので、是非、遥奈先生をお連れしたいのですが」

 無事ミッションコンプリートを決めたつもりでいた遥奈は、不意を突かれて出遅れてしまう。

「……あっ、い、いえ、いえ。医者として診察をしただけですので、お礼だなんてそんな」

 声にも狼狽えた心情が透けていたに違いない。

(ま、まさか、こんなにもストレートに食事に誘ってくるなんて……)

 ――だからって、なんたる不覚。

 キッパリ仕事中だからと突っぱねることもできたのに。しどろもどろで上手く対応できない自分が情けないし恨めしい。

 だが、それだけじゃなかった。

 遥奈が己に落胆している間に、零はすっくと立ち上がり、こちらに近寄ってくる。

 距離が近づくに伴い、清涼感のあるベルガモットの香りがほのかに漂ってくる。

 気づいたときには、長身を屈めた零がデスクに手をつき、囲い込むようにして至近距離から見下ろされていた。

(な、な、何よ、急に。どうしたっていうの?)
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