初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
式典が終わりを迎えた頃には、ガーデンテラスを鮮やかな夕焼けが静かに包みはじめていた。
スタッフらが片付けを進めるなか、零が遥奈の手をそっと手に取った。
「遥奈、お疲れ様」
その声音は式典の時とはまるで違っていた。
深くて、甘くて、耳に心地のいい、遥奈にだけ向けられる、穏やかなものだ。
「零こそ、お疲れ様」
ようやく一息ついた心地がして、遥奈は心からの笑みを返した。
水盤の蒼い光はオレンジと混ざり合い、ゆらゆらと揺らめいている。
ノスタルジックな雰囲気が漂うテラスを零と共に手を取り合い、歩みを進めてゆく。
いつしかスタッフ等もはけていて、二人きりになっていた。
「今日の零、とっても素敵で……見蕩れちゃった。でもそのおかげで、緊張せずに済んだんだけどね」
リラックスしきった遥奈が何気なくはなった言葉に、零が一瞬目を瞠る。
神がかった美貌ゆえか、虚を突かれた仕草まで、様になっている。
遥奈が密かに感心していると、零が反論してきた。
「は? それを言うなら、遥奈だよ。会場中の視線を釘付けにしてて、どれほどヤキモキさせられたか」