初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
食事に誘われたときには、どうしようかと案じたが……。意外にも零は強引に迫ってくる様子もなく、見かけに違わぬ英国紳士然とした節度ある振る舞いで接してくれている。
最初は気後れしまくりの遥奈だったが、零の巧みな話術とさり気ない気遣いとエスコートのおかげで、思いの外穏やかで楽しい時間を過ごしていた。
「――えぇっ⁉ 兄の遥斗をご存じなんですか?」
「ええ。三つ上に異母兄がいるんですが、その異母兄が、遥斗さんとクラスメイトだったので」
兄同士が同級生だと知ってはいたが、まさか零が兄を認識しているとは思わなかった。
「へぇ、そうだったんですね。だったら、零さんが私の存在を認識していても、不思議じゃないですね」
「ええ」
「けど、生徒会長だった零さんとは違って、私は目立つような存在でもなかったし。どうしても信じられなくて……」
アルコールがそれほど強くない遥奈はノンアルのカクテルをゆっくり味わいつつ。お酒に酔ったことがないという零はウイスキーをロックで楽しみながら。互いの話に耳を傾けていた。
壁一面の大きな窓の外には、煌びやかな夜景が広がっていて、気持ちも開放的になっていたのかもしれない。