初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
そんな中、緊張が解れた上に、零が兄と面識があったと知り得たのもあり、遥奈の警戒心はすっかり薄れてしまっていた。
いつしか零の口調も堅苦しい敬語からソフトなものとなり、話しやすさも相まって会話も弾んでいた。
だがあいにく、零が自分に好意を抱くほどのきっかけがあったとは思えない。
ちなみに、零に片想いしていたとは言えないので、零が生徒会長だったので知っているとだけ伝えてある。
会話の流れから何かヒントを聞き出せるかと思われたが……。
「何がきっかけだったんですか?」
「そんな可愛い上目遣いで聞きだそうとしてもダメだよ。遥奈さんに自力で思い出してもらわないと、意味がないからね」
憂いを帯びた瞳をふっと伏せた零に、悪戯っぽい口調ではぐらかされてしまい、遥奈の目論見は外れたのだった。
「えー、そんなぁ」
「拗ねてもダメだよ」
「……子どもじゃないんですから、拗ねたりしませんよ。もうアラサーですし」
零との距離が縮まったと思っていたのに、急に突き放された気がして……
不貞腐れてカウンターに突っ伏した遥奈の頭上に翳りが生じた刹那、耳元に顔を寄せてきた零が甘く囁いた。