初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
通勤時に、自然豊かな街並みを眺めているだけで、心が癒される。
――今日も頑張るぞ!
自然とそういう気持ちにもさせてくれる。
クリニックを訪れる患者にとってもそうであって欲しい――心療内科専門医を志す内科専門医として心からそう思う遥奈だった。
医師国家試験をパスして五年目となる遥奈は、恩師である沢渡の元で心療内科専門医になるべく臨床経験を積んでいるところだ。
心療内科専門医の卵と言えば聞こえはいいが、まだまだ半人前。
患者によって悩みも病状も様々で勉強は欠かせない。二年後に専門医試験を控えているので尚更だ。
そんなわけで遥奈は『余計なこと』に頭を悩ます暇もなく、診察に追われる日々を過ごしていた。
なので、あの男――神楽木零のことなど頭からすっかり消えつつあったのだ。
けれど、その時は刻一刻と迫っていたのだった。