初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
不埒な提案
(私ってば、二十九にもなって何てことを……! 痛すぎる)
――こんな失態なんて一度も犯したことなかったのに……
今更嘆いたところで状況は変わらない。
――とにかく落ち着こう。落ち着いて、先ずは着替えないと。
素早く布団から抜け出して立ち上がろうとしたところで、誰かに背後から腕を掴まれた。
ビクンッと飛び上がった遥奈の耳元に、誰かが甘い声音で問い掛けてくる。
「遥奈さん。そんなに慌ててどうしたの?」
誰かなんて、声を聞かずともわかる。零と二人きりなのだから。
けれど、状況が状況なだけに、どう対応するのが正解なのかがわからない。
当然だ。酔い潰れて迷惑をかけてしまったうえに、一夜の過ちなんて初めてなのだから。
――こんな状況で、零と顔を合わせるなんて、無理だ。一体どんな顔をすれば良いかもわからない。
羞恥に堪りかねた遥奈は、強行突破に踏み切ることにした。
零の手を振り払って帰るつもりが……。
「あの、ご迷惑おかけして、本当にごめんなさい。お礼はまた改めて。今日は帰ります――キャッ‼」
床に降ろそうとした足を踏み外してしまい、零に抱き留められてあえなく失敗。