初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
零となら、恋人として、上手くやっていけそうな気がする。
根拠なんてないけれど、そうあってほしい――心からそう願っていた。
零からは心底嬉しそうに『ありがとう。遥奈とまた会えるなんて、本当に嬉しいよ。夢みたいだ』無邪気な少年のような言葉が紡がれ、ぎゅっと抱きしめられた遥奈は胸をこれでもかとときめかせた。
(「夢みたいだ」なんて、そんなふうに喜んでもらえるなんて……私こそ、夢でも見てるみたい……)
感動さえ覚えていたのだ。それなのに――
部屋で優雅にブランチを堪能してからホテルをチェックアウトした後。運転手付きの高級車で自宅マンションのエントランスまで送り届けてもらった。その際。
『遥奈と離れてしまうのは名残惜しいけど……明日からの仕事頑張って。しばらくは仕事の都合で会えなくなりそうだけど、何とか都合付けて連絡するから。それじゃあ、またね』
憂いを孕んだ甘い声音でそう告げた零は、遥奈の手を引き寄せ額にキスを落とすと、麗しい美貌をキラキラと煌めかせた。
頬を真っ赤に染めてフリーズした遥奈を置き去りにして、零を乗せた車は、初夏の爽やかな風のように走り去ってしまったのである。
結局、最後まで、交際の申し入れはなかった。
まさに、肩透かし。
一線を越えたからって、恋人気取りになって、舞い上がっていた自分が恥ずかしい。