初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
運転手には事前に告げられていたのか、零からの指示がないので、行き先はわからない。
シンと沈黙の降りた車内には、静かな走行音が満たしている。
何ともいたたまれなくて、遥奈は思わず声を放っていた。
「あの、零さん……」
「ん? どうかした?」
「あっ、いえ……その」
声を放ったものの、見当が付いているだけに行き先を聞くのは躊躇われる。
「疲れちゃったよね? ここからだとそんなに時間はかからないと思うから。着くまでの間だけ、ごめん」
それを零は疲れているからだと思い違いをしたようだ。耳元に甘く囁いてくるなり、片腕で抱きしめられた。
たちまち零の匂いと爽やかなベルガモットの香りにほわりと包み込まれる。
久々に感じる零のぬくもりに、言いようのない安堵感と心地よさを覚えてしまった遥奈だったが、車内だと思うと落ち着かない。
「ちょ、零さんっ」
「これ以上何もしないから、安心して。その代わり、遥奈を抱きしめさせて」
離してください。そう伝える前に、首元に顔を埋めた零に切実そうな声音で乞うように告げられて、遥奈は何も言えなくなる。