初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 学生の頃とはいえ、零は遥奈が恋い焦がれていた初恋相手である。

 そんな零からこんなふうに乞われてしまっては、一溜まりもない。

 叶うことなく散ったはずの、甘酸っぱい想いが遥奈の胸に込み上げる。

 過去の想いに囚われないよう、遥奈は必死になって自身に何度も言い聞かせる。

 ――一線を超えたせいで意識してるだけ。これは恋愛感情じゃない。勘違いしちゃ駄目だ。

 結局、車が停車するまでの間、遥奈は零に抱きしめられたままでいた。

 何より、驚いたのが、目的地がホテルではなく遥奈の自宅マンションの駐車スペースだったことだ。

「……え、ここって」

「もう着いちゃったんだね。このまま遥奈と離れてしまうのは……名残惜しいけど。今日はこれで我慢するね」

 当てが外れて、喜ぶべきはずなのに、心のどこかで落胆している自分に気づかされる。

 遥奈は遠ざかってゆく車を見送りながら、身勝手な自身に対しても、驚きを隠せずにいた。



< 63 / 237 >

この作品をシェア

pagetop