初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
遠き日の淡い恋心
七月の第二金曜日の仕事上がり。
京香に誘われて、久々にエステサロンに赴いた遥奈はフェイシャルエステを受けた。
その後、パリの路地裏を彷彿とさせるこじゃれたワインバルへと訪れていた。
看板メニューだという、和牛とイベリコ豚と馬肉の炭火焼きが絶品で、お酒の強い京香はワイン片手に幸せそうに口元をほころばせている。
「ねえ、遥奈もそう思わない?」
「……え?」
「もう、さっきから溜息零すか、生返事ばっかりだと思ったら、やっぱり聞いてなかったんだ」
「……ごめん。週末だし、疲れてるのかな」
対して遥奈は食も進まず、スパークリングワインベースのサングリアをチビチビ含んでは、溜息を零していた。
京香に指摘されて、上手くやり過ごしたつもりが……
「誤魔化しても無駄よ。ここ最近、ずっと上の空だったから、誘ったんだからね。観念して、洗いざらいぶちまけちゃいなさい。聞いてあげるから。ほら」
何もかもお見通しらしい、一枚も二枚も上手の京香に、ズイッと詰め寄られ逃げ場を失った。
とはいえ、現在進行形で患者である零と一線を越えちゃった、なんて、口が裂けても言えない。